皆さん、こんにちは。
Up to dateトレーナーの菅原佑馬です。
認知症は、記憶や判断力の障害により、生活に支障をきたす状態のことをいいます。加齢とともにその有病率(ある時点での人口当たりにその疾病をもつ人の割合)が増加します。
高齢化が急速に進む日本では、認知症患者が急激に増えることが予測できます。このことから、家族などの身近な存在が、認知症になることも、自分自身が認知症になることも当然ながら考えられます。なかには、今現在身近な人が認知症になっている方もいるかもしれません。
そんな認知症の予防に運動が効果的であることを皆さんは知っていましたか?
主要な認知症
「加齢によるもの忘れ」と「認知症によるもの忘れ」には違いがあります。例えば、体験したこと自体を忘れてしまったり、もの忘れの自覚がなかったりする場合は、認知症の可能性があります。
また、認知症の疾患として、代表的なものは次のとおりです。
認知症のおよそ7〜8割は、アルツハイマー型認知症と脳血管性認知症およびそれらの混合型の認知症で占められています。そのなかでも、アルツハイマー型認知症がもっとも多いです。その他には、レビー小体型認知症や前頭側頭型認知症などがあります。
アルツハイマー型認知症は、脳の一部が萎縮して起こる認知症です。昔のことは記憶に残っているのに最近のことは忘れやすい、といった症状があらわれ、軽度の物忘れから徐々に進行して時間や場所の感覚を失っていきます。
認知症の15〜20%を占めると考えられる脳血管性認知症は、脳血管障害によって起こります。脳血管障害の原因疾患としては、脳梗塞、血栓症、脳出血、くも膜下出血などがあげられます。これらの疾患は、運動不足、肥満、飲酒、喫煙などの生活習慣が危険因子として知られています。
認知症の大部分を占めるアルツハイマー型や脳血管性認知症は、生活習慣病(高血圧、糖尿病など)との関連があるとされています。したがって、バランスの良い食事や定期的な運動習慣を身につけるなど、生活習慣の改善が、認知症の予防につながることが分かっています。
認知症の前段階であるMCI(軽度認知障害)
正常と認知症の中間ともいえる状態のことを、MCI=Mild Cognitive Impairment(軽度認知障害)といいます。MCIは、認知症になるリスクが高く、MCIの人のうち年間で10〜15%が認知症に移行するとされています。
その一方で、38.5%のMCI高齢者が、5年後に正常な認知機能へと回復するという報告もあり、適切な対策によって、認知症を防げることが分かっています。
MCIの状態から脱却することが、認知症を予防、もしくは、発症を遅らせることにつながるため、MCI高齢者に対して、早期診断・早期治療をすることがきわめて重要だと考えられるようになっています。
認知症予防としての運動
ACSM(アメリカスポーツ医学会)が推奨するウォーキングプログラムでは、1日30分の早歩きを週5日行うことを目標としています。有酸素性運動は脳の血流を増やし、認知症の発症を遅らせる効果が期待できます。それと同時に、運動プログラムを長期にわたって継続するための身体能力を維持するためにも役立ちます。
運動以外の日々の活動量を増やすことも認知症予防の観点からは、とても重要です。定期的な運動の他にも、ガーデニングや家事など日常生活での身体活動を増やすことも認知症予防には効果的です。
認知症は、毒素である「アミロイドβ」や、「タウたんぱく」という物質が脳のなかにたまることで起こります。アミロイドβに関しては、通常、脳のなかにとどまらず排出され、タウたんぱくも過剰に発生することはありません。しかし、運動習慣がない人の脳をみると、運動している人に比べてアミロイドβが排出されずに残っていて、タウたんぱくが過剰に発生していることがわかっています。
つまり、運動は認知症の原因となる物質を脳から取り除く、もしくは、発生を抑制するということです。
喫煙、運動不足、栄養の偏りなどによって、生活習慣病などの様々な病気にかかることは、皆さんもよく知っていたと思います。体に悪いライフスタイルは、認知症の原因にもなり、体に悪いことは、脳にも悪いことだということをぜひ覚えておきましょう。